多くの人が混同しやすいのが、「政令指定都市の区(行政区)」と「東京都の23区(特別区)」の法的位置づけです。同じ「区」という名称を使っていても、その権限と構造は全く別物です。
最大の違いは、「独立した地方公共団体(基礎自治体)であるかどうか」という点に集約されます。地方自治法上、政令指定都市の区はあくまで「市役所の内部組織(出先機関)」に過ぎません。これに対し、東京23区は一般の市町村とほぼ同等の自治権を持つ「独立した特別地方公共団体」として定義されています。
具体的に見てみましょう。たとえば横浜市青葉区の「青葉区長」は、横浜市長から任命された市の幹部職員(公務員)です。青葉区独自の条例を作ったり、区長独自の判断で新しい税金を導入したりすることはできません。区役所の仕事は、横浜市全体の方針に基づいて、戸籍や住民票の発行、介護保険や生活保護の申請受付、地域の道路整備など、住民に身近な窓口業務を正確に執行することにあります。
一方、東京都世田谷区の「世田谷区長」は、区民の選挙によって直接選ばれた首長です。世田谷区議会が存在し、独自の条例を可決し、区の予算案を審議します。ただし、東京23区は巨大都市圏の一体性を保つため、消防、上下水道、大規模な都市計画などは東京都庁が一元管理しており、税制面でも「都区財政調整制度」という特殊な枠組みが適用されています。