ネット上の知恵袋やSNSで頻繁に見かける「キャラクターのアイシングクッキーを断られた」という声。この現象の背景にあるのは、職人の意向や技術不足ではなく、厳格な著作権法および不正競争防止法の遵守義務です。
一般消費者の間では「個人が家で食べるだけなのだから私的使用(著作権法第30条)の範囲内ではないか」という誤解が根強く残っています。しかし、法律の解釈上、注文者が個人であっても、対価(代金)を受け取って製造・販売するパティスリーや工房側は完全な「営利目的の商用利用」と見なされます。版権元(出版社、アニメ制作会社、サンリオ、ディズニー等)から正式な商品化ライセンスを取得していない限り、無許諾でキャラクターの顔やロゴを描いて販売する行為は明確な著作権侵害(複製権・翻案権の侵害)にあたります。
取材に応じた都内の洋菓子店オーナーは、次のように現場の苦悩を吐露します。
「数年前までは『お客様の笑顔のためなら』と善意で受けてしまう工房も一部にありました。しかし現在、SNSでの画像拡散を契機に大手版権元から内容証明郵便が届く事案や、アカウント凍結に追い込まれる工房が激増しました。数千円の売り上げのために数百万円の損害賠償請求や刑事告発のリスクを背負うことは、プロの事業者として絶対にできません」
業界団体によるコンプライアンス指針の厳格化に伴い、保健所の菓子製造業許可を得て正規に営業する信頼性の高いショップほど、キャラクターそのもののオーダーには「受託不可」を徹底しています。裏を返せば、フリマアプリなどでキャラクターのアイシングクッキーを安価に受注している個人出品者は、著作権法違反かつ食品衛生法上の無許可営業であるリスクが極めて高いため、衛生管理・破損リスクの両面から絶対に手を出してはなりません。