狂四郎の代名詞といえば、愛刀・無想正宗を掲げてゆっくりと円を描く円月殺法(えんげつさっぽう)です。刃が完全な円を描き終えた瞬間、間合いに入った相手は幻惑され、一撃のもとに斬り伏せられるという伝説の剣技です。
田村正和さんの円月殺法は、テレビ画面の枠を超えた芸術的な映像美として演出されました。スローモーションを多用し、月光や水面のきらめき、桜吹雪を背景にしながら、流麗に弧を描く刀身。その軌跡は単なるアクションシーンではなく、狂四郎の内面にある哀しみと死生観を表現する儀式のような厳かさを持っていました。
殺陣師との綿密なリハーサルを重ね、自らの指先から切っ先までの角度をミリ単位で計算し尽くした田村さんのこだわりが、円月殺法を時代劇史上屈指の美しい必殺技へと押し上げたのです。