現在発行されている1万円札の肖像は、渋沢栄一です。幕末から昭和初期にかけて活躍し、現在の日本を形作るあらゆる産業基盤を整えた人物として知られています。
彼が「日本資本主義の父」と呼ばれる最大の理由は、生涯で関わった企業の数が約500社にも及ぶという驚異的な実績にあります。第一国立銀行(現・みずほ銀行)を皮切りに、東京証券取引所、東京ガス、帝国ホテル、キリンビール、JR各社や私鉄の前身となる鉄道会社など、現代の私たちが日常的に利用している名だたる大企業の立ち上げを主導しました。
渋沢の真骨頂は、単なる利益追求のビジネスマンにとどまらなかった点です。「私利私欲のためではなく、公益のために事業を行う」という信念を貫き、福祉施設や孤児院、大学などの教育機関を含む約600もの社会事業や民間外交にも私財を投じて尽力しました。経済と道徳の両立を説いたその生き様こそが、新時代の最高額紙幣にふさわしい顔として評価されたのです。