歴史的な人体実験は嘘であるものの、鏡に向かって問いかけ続ける行為が人間の認知機能に深刻なバグを引き起こすのは科学的な事実です。その中心にあるのが心理学で呼ばれる「ゲシュタルト崩壊」です。
ゲシュタルト崩壊とは、全体としてのまとまりを持った構造から個別の構成要素へ意識が分散し、全体の認識が失われてしまう現象を指します。同じ漢字を何分も見つめていると「こんな文字だったか?」「ただの線の集まりに見える」と感じる現象が代表例です。
人間の顔も同様に、目・鼻・口・輪郭などの配置パターンを脳が統合して「ひとつの顔」として認識しています。しかし、鏡の中の顔を凝視しながら「お前は誰だ」と言語的な問いかけを繰り返すと、脳の顔認識ネットワークに過剰な負荷がかかります。その結果、「顔」という統合された認知がバラバラになり、「目の前にいるパーツの集まりが誰なのか全く分からない」という強烈な違和感が生じることになります。
さらに「お前は誰だ」という問いかけは、自己同一性(アイデンティティ)を直接揺さぶる言葉です。鏡に映る像という「自分そのもの」を否定・懐疑する暗示を自らかけ続けることで、脳は自己と他者の境界を見失い、解離症状や強い不安感を引き起こす引き金となります。