実務の現場で金属種を正確に識別するには、複数の検証ステップを組み合わせることが不可欠です。ネット上の簡易的な知識だけで判断しようとすると、誤判定により買取現場で査定減額を受けたり、加工時に刃物を破損させたりする原因になります。
第一の手がかりは砲金真鍮色の違いです。真鍮は亜鉛が多量に含まれているため、磨き面はレモンイエローに近い明るく鮮やかな「黄金色(ゴールド)」を呈します。一方の砲金は銅の含有比率が85%前後と高いため、切削面や地肌は赤みを帯びた「赤褐色」「鈍いピンクゴールド」に近い色調を示します。ただし、表面が長期間大気中の酸素に触れていると、真鍮経年変化と錆によって黒褐色に変色し、水分が加わると緑青(ろくしょう)が発生するため、外観のくすみだけで色を判断するのは禁物です。
確実性を高める検証法が「ヤスリやサンダーによる切削傷の観察」です。表面の酸化層を金ヤスリで一削りし、現れた素地の色を確認します。このとき、切削粉がパラパラと粉状に落ちるのが鋳造品である砲金の特徴であり、削り肌が赤褐色であれば砲金と断定できます。対して真鍮は粘り気があり、ヤスリの目に詰まりやすく、削り面は鮮烈な黄色を示します。
現場で最も注意すべき盲点が砲金真鍮磁石の反応です。「磁石に付かないから砲金だ」「磁石に付くから鉄混じりの真鍮だ」といった俗説が流布していますが、非鉄金属である純粋な砲金も真鍮も、本来はどちらも磁石には全く反応しません。もし磁石が吸着した場合、それは合金自体の反応ではなく、内部に鉄製のスリーブやシャフトが圧入されているか、表面にニッケルメッキが施されている証拠です。スクラップ選別現場では、ネオジム磁石を用いて「異物・鉄芯の混入」を弾くために磁石を使用するのであり、砲金と真鍮の区別に磁石反応は使えないという事実を認識しておく必要があります。