東芝の買収をめぐって最も多く寄せられる疑問が、「結局、誰が東芝を買ったのか」という点です。結論から言えば、東芝本体を買収したのは海外の巨大コングロマリットでも中国資本でもありません。国内のプライベート・エクイティ(PE)ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)が組成した「国内連合」のコンソーシアムです。
2023年3月、東芝取締役会はJIP連合からの買収提案を受け入れる方針を正式に決議。同年8月から9月にかけて実施された株式公開買い付け(TOB)には、発行済み株式の78.65%に達する応募が集まり、TOBは無事成立しました。買収総額は約2兆円に達し、国内企業を対象とした非公開化案件としては日本経済史に残る異例のメガディールとなりました。
JIP連合には、オリックス、ローム、中部電力など国内有力企業約20社が参画し、三井住友銀行をはじめとするメガバンク各行が総額約1.2兆円の買収資金(シニアローン)を融資しました。なぜこれほど大規模な国内企業連合が結成されたのでしょうか。経済産業省や金融関係者の証言によると、東芝が手がける原子力発電や防衛関連事業(レーダーや通信機器など)が、外為法上の「国の安全保障に直結する重要インフラ技術」に指定されていた点が決定打となりました。海外ファンドへの単独売却は安全保障上の懸念から容認できず、「オールジャパン」の枠組みで受け皿を作らざるを得なかったのが実情です。
この買収スキームにより、2023年12月20日をもって東芝は東京証券取引所プライム市場を上場廃止となりました。かつて日経平均株価の主力を担い、経済界に君臨した名門が、市場から姿を消してプライベートカンパニー(非公開会社)へと転換した瞬間でした。