企業の経理担当者や税理士が現場で最も頭を抱えているトラブルが、「チャージ領収書」と「履歴印字(利用明細)」の混同です。この2つは会計上、全く異なる意味を持っています。
Suicaにチャージした段階で発行される領収書は、あくまで「現金を電子マネーという前払手段に交換したこと」を証明する前払金(仮払金)の証明書に過ぎません。これ単体では、社用で電車に乗ったのか、コンビニで私的な買い物をしたのかを客観的に証明することが不可能です。
一方、「履歴印字」は、いつ・どの駅からどの駅まで乗車し、いくら運賃が引き落とされたかを記録したものです。法人税法および所得税法の実務において、旅費交通費として経費計上(損金算入)するための実質的な根拠となるのは、この利用履歴です。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)における注意点として、1回の取引が「3万円未満の公共交通機関(鉄道・バス等)による旅客の運送」である場合、適格簡易請求書の交付義務が免除される公共交通機関特例が適用されます。そのため、一定の事項を記載した帳簿(乗車区間・日付・金額・目的)を保存していれば、領収書そのものがなくても仕入税額控除が認められます。しかし、社内不正防止や内部統制の観点から、多くの企業では「利用履歴印字」または「モバイルSuicaの利用明細画面」の提出を義務付けています。