核エネルギーを理解する第一歩は、原子核の中で起こる物理現象のベクトルが「正反対」である事実を押さえることです。核分裂と核融合の違いをわかりやすく整理すると、巨大な原子を分割してエネルギーを取り出すか、極小の原子同士を結合させて莫大な熱を生み出すかという違いに行き着きます。
既存の原発における核分裂の連鎖反応では、ウラン235などの重い原子核に中性子が衝突することで核が2つに分裂し、その際に放出される結合エネルギーと新たな中性子を利用します。この新たに飛び出した中性子が次のウラン原子を次々と分裂させることで連鎖反応が持続します。制御棒によって中性子の数を精密に調整しなければ、熱出力が急激に跳ね上がる構造的リスクを本質的に内包しています。
一方で、核融合発電のメカニズムと仕組みは、太陽の内部で起きている現象の再現です。海水中に無尽蔵に存在する重水素(デューテリウム)と、リチウムから生成される三重水素(トリチウム)という2種類の軽い水素原子核を、1億度を超える超高温・超高密度のプラズマ状態で正面衝突させます。このとき、両者が融合してヘリウムと中性子へと変化する質量欠損から、核分裂をも凌駕する桁違いのエネルギーが放出されます。
燃料1グラムあたりから生み出されるエネルギー量は、核分裂でも石油数トン分に匹敵しますが、核融合反応はさらにその約4倍、石炭換算で約8トン分に達します。化石燃料のように二酸化炭素(CO2)を排出しない点では共通していますが、資源の偏在性と反応のコントロール性において両者は明確に一線を画しています。