本作の劇中歌が放つインパクトは、映像と音がミリ秒単位で完全に同期している点にあります。観客の胸に深く刻まれた主要ボーカル曲の名シーンと、その音楽的仕掛けを振り返ります。
映画のオープニングを飾る「夢灯籠」は、静謐なアルペジオと野田洋次郎の透き通るボーカルから始まり、疾走感あふれるバンドサウンドへとなだれ込みます。「あぁ このまま僕たちの声が 世界の端っこまで消えることなく」というフレーズとともにタイトルロゴが表示される構成は、観客を一気に作品の深部へと引き込みました。
物語のテンポが一気に加速する入れ替わり生活のダイジェストでは、「前前前世 (movie ver.)」が挿入歌として炸裂します。シングルやオリジナルアルバム版と映画版の違いとして、映画バージョンはイントロの尺が劇中のコミカルな動きに合わせて緻密に編集されており、瀧と三葉が互いの生活に戸惑いながらも順応していく様子をエネルギッシュに推進させます。
そして物語最大のクライマックス、ティアマト彗星が夜空を裂き、町を救うために三葉が必死に駆け抜けるシーンで流れるのが「スパークル (movie ver.)」です。ピアノの美しく儚いリフレインから始まり、オーケストラとバンドが渾然一体となって壮大なスケールへと展開していく約9分間のロングトラックは、映像美と相まって鳥肌が立つほどのカタルシスを生み出しました。
ラストシーンからエンドロールを包み込む「なんでもないや」は、すれ違い続けたふたりの長い旅路を優しく肯定する楽曲です。失われた記憶の切なさと、それでも未来へと歩み出す微かな希望を描き切った歌詞は、映画館を出た後も長く心に残り続ける強い余韻をもたらします。