我妻善逸と獪岳の間に横たわる決定的な断絶は、雷の呼吸の継承をめぐる「才能の非対称性」から始まりました。雷の呼吸は基本となる六つの型から構成されますが、獪岳は基本にして最重要とされる「壱ノ型(霹靂一閃)」のみがどうしても使えず、逆に善逸は「壱ノ型」しか使えないという、あまりにも皮肉な欠落を抱えていたのです。
桑島慈悟郎は、この凸凹の2人が互いを補い合い、2人で1つの「後継」となることを切望していました。修行時代に桑島が2人へ贈った、同じ柄の黄色の羽織はその願いの象徴です。しかし、この親心こそが獪岳のプライドを決定的に粉砕しました。誰よりも努力し、弐ノ型から陸ノ型までを完璧に使いこなす自分と、泣き叫んでばかりで壱ノ型しか打てない落ちこぼれの善逸を「同格」として扱われたことが、獪岳には耐え難い侮辱として刻まれてしまったのです。
公式ファンブックや作中の描写からも明らかなように、獪岳は「自分を正当に評価しない人間」を激しく憎悪する心理傾向を幼少期から抱えていました。善逸に対して日常的に浴びせていた暴言や暴力、そして桃を投げつける行為は、単なる嫌悪にとどまらず、自らの優位性を誇示し続けなければ崩壊してしまう極度の精神的脆弱性の表れでした。