頭がないとなると、気になるのが「内臓と口の場所」です。クラゲの口は傘の頂点ではなく、傘の内側(下傘)の中央部に位置しています。傘の下からのぞき込むと垂れ下がっているヒラヒラとした器官は「口腕(こうわん)」と呼ばれ、捕らえた獲物を中央の口へ運ぶ役割を果たします。
クラゲの内臓構造は非常に原始的かつ合理的です。口の奥には「胃腔(いこう)」と呼ばれるひとつの大きな空洞があり、ここで獲物を消化・吸収します。特筆すべきは、口が排泄口を兼ねている点です。消化管が一本の管になっておらず、口から取り込んだ餌を消化したあと、消化しきれなかったカスは再び同じ口から体外へと排出されます。
この口腕や傘の周囲から伸びる無数の触手には、「刺胞(しほう)」という微小な毒針カプセルが無数に備わっています。獲物や外敵が触れると、物理的・化学的刺激によって瞬時に針が飛び出し、麻痺毒を注入して動きを止めます。脳の指令を介さず、触手の細胞が自律的に発射を判断する極めて高速な迎撃システムです。