物語の幕開けとなる第1話で、視聴者に最も強烈なインパクトを残したのが、尾花夏樹が早見倫子(鈴木京香)に向けて放った「星取らせてやるよ」という一言です。パリの超高級三つ星レストランの面接に落ち、自らの才能の限界を痛感して涙を流す倫子に対し、尾花は不敵な笑みを浮かべながらこの言葉を告げました。
一見すると、かつてパリで二つ星を獲得した天才シェフならではの上から目線の発言に聞こえるかもしれません。しかし、このセリフの真意は傲慢さとは対極にあります。アレルギー食材混入事件によってすべてを失い、料理への情熱すら見失いかけていた尾花が、倫子の「美味しくて涙が出る」「悔しい」という純粋な料理愛と愚直さに心を揺さぶられ、自らの人生をもう一度賭ける決意をした瞬間でした。
「俺が星を獲る」ではなく「お前に星を取らせる」。自分が表舞台に立つのではなく、倫子をグランメゾンのシェフ(トップ)に据えて三つ星を獲らせるというこの宣誓は、尾花の再生の誓いであり、倫子の隠れた才能を誰よりも早く見抜いたプロとしての最大の敬意だったのです。