映画関係者や舞台挨拶の取材現場において、筒井真理子のストイックさは常に畏敬の念をもって語られます。彼女自身、過去のインタビューで役作りに対する姿勢について次のように語っています。
「役を生きる上で、そこに脚本上の必然性があるならば、服を脱ぐことや濡れ場を演じることに何の躊躇もありません。観客に登場人物の生々しい息遣いを届けることが私の仕事ですから」(映画関係者談・当時の舞台挨拶より)
その徹底ぶりを象徴するのが、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』でのエピソードです。筒井真理子は、平和な日常が崩壊していく過程を肉体で表現するため、物語の前半から後半にかけて約13kgの体重増減を短期間で実行しました。前半のふくよかで無防備な主婦から、絶望によって心身ともにやつれ果てた姿への変貌は、CGや特殊メイクに頼らない役者魂の結晶でした。
深田晃司監督は、筒井真理子について「彼女はフレームの中で常に嘘をつかない。感情をただなぞるのではなく、肉体の底から湧き上がる衝動を的確にカメラへ差し出してくれる稀有な名優」と語り、彼女への絶対的な信頼から『よこがお』の脚本を筒井への当て書きとして執筆したことを明かしています。