カニの調理法といえば「大鍋で茹でる」光景を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、毛蟹において最も推奨されるのは圧倒的に「蒸す」調理法です。その最大の理由は、毛蟹の代名詞とも言えるカニ味噌の性質にあります。
毛蟹のカニ味噌は非常にきめ細かく、加熱によって固まる過程で熱湯の対流にさらされると、甲羅の隙間から簡単にお湯の中へと溶け出してしまいます。茹で汁が黄色く濁ってしまうのは、まさに濃厚な旨味そのものが失われている証拠です。対して、蒸気で包み込むように熱を通す「蒸し」であれば、外圧による物理的な流出を抑え、カニ味噌を甲羅の中でふんわりと固めることができます。
さらに、身肉に含まれるグルタミン酸やグリシンといった水溶性の旨味成分も、蒸気加熱なら身の中にしっかりと留まります。水っぽさが一切なく、繊維の一本一本に甘みが凝縮された極上の仕上がりを実現できるのが、蒸し調理ならではの決定的なアドバンテージです。