この神話において、世界中のプレイヤーが長年抱き続けている最大の疑問が、「ホウオウによって蘇生される前、焼け死んだ名もなき3匹のポケモンとは一体誰だったのか」という点です。その中で最も有力視され、事実上の定説として語り継がれているのが三犬のブイズ転生説です。この説が単なるファンの妄想を超え、説得力を持ち続ける背景には、偶然とは到底思えない3つの決定的な符号が存在します。
第1の証拠は、属性と進化系列の完全なる符合です。第1世代から存在するイーブイの進化形であるサンダース(電気)、ブースター(炎)、シャワーズ(水)の3系統は、ライコウ(電気)、エンテイ(炎)、スイクン(水)と完全に一致しています。属性の一致のみならず、シャワーズが「雨乞い」や水辺を想起させ、ブースターが「熱気」、サンダースが「稲妻」を体現している点は、カネのとうを襲った自然現象(雷・炎・雨)のシークエンスと完全に重なり合います。
第2の証拠は、エンジュシティにおける「まいこはん」とブイズの密接な文化的背景です。ホウオウを崇めるエンジュの町において、儀式や伝統芸能を司る「まいこはん」たちが手持ちとして繰り出してくるのは、他ならぬイーブイの進化形たちです。エンジュの土地柄そのものが古くからイーブイ一族と深い共生関係にあった事実は、焼けた塔に取り残されたポケモンがイーブイの進化形であった可能性を強く補強しています。
そして第3の証拠として、第7世代(『サン・ムーン』)以降のバーチャルコンソール版産個体で解禁された隠れ特性(夢特性)の仕様が挙げられます。通常特性が「プレッシャー」である三聖獣に対し、公式が後天的に設定した隠れ特性は、ライコウが「ちくでん」、エンテイが「もらいび」、スイクンが「ちょすい」でした。これらはまさに、サンダース、ブースター、シャワーズの通常特性と完全に一致していたのです。このゲームデータ上の設定が判明した瞬間、国内外の考察コミュニティでは「開発陣からの無言のメッセージではないか」と激震が走りました。
もっとも、株式会社ゲームフリークや任天堂の公式見解としては、現在に至るまで「元のポケモンはブイズである」と明言したことは一度もありません。あえて正体を「名もなきポケモン」として不可知の領域に残すことで、神話としての深みとプレイヤーの想像力を刺激し続ける制作側の美学がうかがえます。