多くの醤油メーカーがステンレス製のタンクを導入する中、矢木醤油では今もなお、歴史を刻んだ木桶が稼働している。木桶の表面や蔵の柱、壁には、目に見えない無数の「蔵付き酵母」が生息している。これが、それぞれの蔵にしか出せない「我が家の味」を作る最大の秘密だ。
木桶での醸造は、メンテナンスに多大な手間とコストがかかる。それでも職人たちが木桶を手放さないのは、木が呼吸をすることで醤油がまろやかに育つことを知っているからだ。手仕事による微調整と、長年の経験に基づく勘。これらが融合することで、機械では決して再現できない黄金比の味わいが完成する。