深い霧に包まれたV字型の渓谷。切り立った崖にしがみつくように建つ古民家群。徳島県西部、いや、日本の秘境の代名詞とも言える祖谷(いや)地区が、今、劇的な進化を遂げている。
かつてはアクセス困難な「隠れ里」だったこの場所は、伝統的な茅葺き民家をモダンに改装したラグジュアリーな宿泊施設へと生まれ変わり、世界中のセレブリティを魅了している。しかし、決して観光地化されすぎてはいない。地元の人々が何世代にもわたって守ってきた暮らしの匂いや、急斜面での農業(世界農業遺産)がそのまま息づいているからだ。祖谷の代名詞である「かずら橋」を渡るスリルは相変わらずだが、そこから一歩踏み込んだ「集落での対話」こそが、現在の旅の主役になっている。