全国に数ある八幡宮の中で、なぜ大崎八幡宮の社殿が建造物として「国宝」に指定されているのか。その決定打は、本殿と拝殿を中間の「石の間」でつなぐ石の間造(権現造)の現存最古の遺構であるという事実です。のちに徳川家康を祀る日光東照宮や久能山東照宮で大成される権現造の建築工法は、この大崎八幡宮においてすでに完成の域に達していました。
政宗が社殿の造営に投入した陣容は破格そのものでした。当代随一の大工棟梁であった梅村彦太郎家次をはじめ、京都から呼び寄せられた一流の工匠集団が結集。当時、京都の豊国廟を手掛けていた職人たちを招聘したため、随所に安土桃山時代の最先端モードが凝縮されています。
社殿の最大の見どころは、周囲の木々の緑に鮮烈に映える「総黒漆塗り」の外壁です。社寺建築といえば朱塗りを思い浮かべる人が多い中、漆黒で統一された佇まいは圧倒的な重厚感を醸し出します。さらに庇(ひさし)の下や組物、欄間には、極彩色の精緻な彫刻や優美な金箔装飾、蒔絵が施されており、黒と金の鮮烈なコントラストは息を呑む美しさです。
現地を訪れたなら、ぜひ拝殿正面の蟇股(かえるまた)や長押(なげし)の装飾金具に注目してください。鳳凰や麒麟、唐草模様が立体的に彫り込まれており、光の当たり方によって刻一刻と表情を変えます。豪壮にして華麗、粋を極めた「伊達者(だてもの)」の美学が、400年の時を超えて今なお色褪せない理由がここにあります。