視覚障害者支援の現場において、長年啓発が続けられながらも根強く残る偏見が「白杖を持つ人は100%光を失っている」という思い込みです。厚生労働省の身体障害児・者実態調査や関連団体の推計データによると、日本国内の視覚障害者(手帳保持者約31万人)のうち、光を全く感じない全盲の割合は一部であり、大半は何らかの視覚情報が得られるロービジョン(弱視)に該当します。
ロービジョンと一口に言っても、視界の中心部が欠損する中心暗点、筒を通して見ているように視野が極端に狭くなる視野狭窄、薄暗い場所で著しく視力が落ちる夜盲症、光が乱反射して激しい痛みを伴う羞明(しゅうめい)など、症状は千差万別です。「段差や障害物は見えないが人の気配は分かる」「昼間は歩けるが夕方になると全く足元が見えなくなる」という当事者が安全に街を歩くために、白杖は不可欠な存在となっています。
専門教育の現場において、白杖の役割は明確に次の3点に集約されます。
第1に「安全性の確保(探索機能)」です。前方約1〜2歩先の路面状況、段差、縁石、側溝の有無、障害物を事前に触知し、足を踏み外す転落事故を防ぎます。
第2に「身体の防御(バンパー機能)」です。歩行者の腰や胸の高さに突如現れる看板、駐車車両のミラー、開閉扉などの突起物から身を守る盾となります。
第3に「シンボル効果(周囲への注意喚起)」です。自分が視覚に困難を抱えている事実を周囲の歩行者や自転車、自動車のドライバーに知らせ、接触を回避してもらうための社会的サインとしての機能を果たしています。