華々しい栄光に彩られた森光子ですが、そのキャリアは決して順風満帆ではありませんでした。10代半ばで映画界に入ったものの、長らく端役や歌手活動、戦地への慰問など過酷な下積みを経験。結核を患い生死をさまようなど、若い頃は幾多の試練に見舞われました。
転機が訪れたのは40代を目前にした頃でした。喜劇の舞台で頭角を現すと、1970年にスタートしたTBS系ドラマ『時間ですよ』で銭湯「松の湯」の女将・松野まつ役を好演。最高視聴率30%を超える大ヒットとなり、庶民的で温かい「日本のお母さん」としてのイメージを不動のものにしました。遅咲きながらも実力で掴み取った成功が、彼女の演技に唯一無二の深みを与えました。