製麺現場から排出される排水の最大の難点は、極めて高いBOD(生物化学的酸素要求量)およびCOD(化学的酸素要求量)にあります。一般的な家庭排水のBODが約200mg/L程度であるのに対し、うどんの茹で麺機から出る茹で汁のBODは3,000〜15,000mg/L、高濃度のデンプン沈殿廃液に至っては30,000mg/Lを超えるケースも珍しくありません。
この驚異的な数値をもたらす主因は、加熱によって糊化(アルファ化)し、微細なコロイド状となって水中に分散した「小麦デンプン」です。デンプン粒子は水中で安定して浮遊し、自然沈降しにくいため、単なるスクリーンろ過や油水分離槽(グリストラップ)だけでは全く歯が立ちません。
さらに現場を苦しめるのが、微生物による生物処理過程で発生する「糸状性バルキング」です。糖類・炭水化物が過剰に存在する高濃度排水では、特定の糸状菌が異常増殖し、沈降槽で活性汚泥が沈まなくなって処理水とともに流出(キャリーオーバー)する事故が頻発します。香川県をはじめとする製麺工場が集積する地域では、水質汚濁防止法の一律基準(BOD日平均120mg/L、最大160mg/L)に加え、自治体独自の厳しい「上乗せ基準」が設定されており、処理設備の不調は操業停止や罰則に直結する死活問題となっています。