コミック版『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話(STAGE.96「旅立ち」)は、人類の魂が一つに溶け合う人類補完計画の渦中から幕を開けます。使徒との死闘、渚カヲルとの邂逅と別れ、そして戦略自衛隊の侵攻を経て初号機に取り込まれた碇シンジは、母・碇ユイとの対話の末に「他者の存在する世界で、もう一度やり直す」決断を下しました。
シンジが選んだのは、痛みを避けるための全人類の融合ではなく、傷つきながらも他者と触れ合う日常でした。初号機が自らの肉体を槍とともに宇宙へ射出し、すべてのEVAシリーズが活動を停止すると、世界は劇的な再構築(リライト)を迎えます。
目覚めたシンジが立っていたのは、一面の白銀の雪が舞い散る東京の駅前でした。セカンドインパクトの影響で年中夏となっていた旧世界とは異なり、冬の寒さと雪が存在する「四季が正常に巡る日常」が戻っていたのです。シンジは叔母の家から高校受験のために上京してきた一人の平凡な少年として電車を待っていました。
混雑するプラットフォームで、シンジは人混みに押された見知らぬ少女の手を思わず掴みます。その少女こそが、マフラーを巻いた惣流・アスカ・ラングレーでした。ふたりの間に前世界の戦いの記憶は明確には残っていません。しかし、互いに触れ合った瞬間、言葉にできない温もりと既視感(デジャヴ)が走ります。「あんた、いい手をしてるじゃない」と微笑むアスカ。ふたりは名乗り合うこともなく、それぞれの目的地へ向かう電車へと乗り込み、日常の雑踏の中へと歩み出していきました。
街の郊外には、かつての戦いを物語る「エヴァ量産機の化石」が雪に埋もれ、古代の遺物のように佇んでいます。そしてシンジの胸元には、葛城ミサトの形見であった十字架のペンダントが微かに揺れていました。悲劇の痕跡を抱えつつも、少年は自らの足で未来へと歩み始めたのです。