ネット上でグリチルリチン酸ジカリウムの危険性が囁かれる最大の要因は、「ステロイド様(よう)作用があるため、皮膚が薄くなったりリバウンドが起きたりするのではないか」という誤解に起因しています。しかし、薬理学的な観点から見れば、両者は根本的に別物です。
医療現場で処方されるステロイド外用薬は、副腎皮質ホルモンそのもの、あるいはその誘導体であり、細胞内のグルココルチコイド受容体に直接結合して強力な免疫抑制作用と抗炎症作用を発揮します。劇的な効果を持つ反面、長期連用によって局所の免疫力が低下し、毛細血管拡張や皮膚萎縮などの副作用リスクが伴います。
対してグリチルリチン酸ジカリウムは、ステロイドホルモンを代謝・不活性化する酵素(11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ:11β-HSD)の働きを穏やかに抑制することで、生体が本来持っているコルチゾール等の働きを補助的に維持する作用機序を持ちます。自前の免疫機構を完全にシャットダウンするわけではないため、ステロイドのような皮膚菲薄化やリバウンド現象(急激な離脱症状)を引き起こすことはありません。
また、重篤な副作用として知られる「偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、むくみ等)」についても、過剰な警戒は不要です。これは甘草を含む漢方エキス製剤などを1日数グラム単位で長期内服した場合に問題となる全身性の中毒症状です。化粧水やクリームなどの外用剤として肌に塗布した場合、経皮吸収される量はごく微小であり、血中濃度が上昇して偽アルドステロン症を引き起こすことは通常考えられません。