保険証の色にランクを見出そうとする心理的背景には、日本社会特有の「組織への帰属意識」と「所属階層の可視化欲求」が横たわっています。
終身雇用と年功序列を基盤としてきた昭和・平成の日本型雇用において、大企業や官公庁に所属することは社会的な身分証明そのものでした。欧米のように個人のスキルやジョブディスクリプションで評価されるのではなく、「どこの組織に所属しているか」で個人の信用が計られてきた歴史があります。その帰属先を手軽に確認できる数少ない公的アイテムが健康保険証であったため、人々は券面の色に無意識のステータスシンボルを投影してきたと考えられます。
しかし、本質を見失ってはなりません。国民皆保険制度の真の強みは、どのような色・種類の保険証であっても、日本全国の医療機関で一律の保険診療(原則3割負担、高額療養費制度の適用)を等しく受けられる点にあります。色によるマウントや序列意識は、制度の本質を理解していない浅薄な虚栄心に過ぎません。