刑事裁判において最大の焦点となっているのが、実行犯である田村瑠奈被告の刑事責任能力です。逮捕直後から瑠奈被告の精神状態には重大な懸念が持たれ、札幌地検は2023年8月から約半年間にわたる鑑定留置を実施しました。
弁護側は、瑠奈被告が解離性同一性障害(いわゆる多重人格)を患っており、事件当時は「シンシア」などと名乗る別の人格が身体を支配していたため、自身の行為を制御できない心神喪失または心神耗弱の状態にあったと主張しています。実際、法廷に提出された家族間のやり取りでも、瑠奈被告が別の人格として振る舞い、家族がそれに翻弄されていた記録が散見されます。
しかし検察側は、以下のような客観的証拠を積み上げ、瑠奈被告には完全な刑事責任能力があったと結論づけました。
- 事前の綿密な準備:防犯カメラを意識した変装用ウィッグの用意、殺傷能力の高い複数の刃物の選定、遺体運搬用スーツケースの購入など、合理的な計画性が見られる点。
- 犯行現場での隠蔽工作:被害者のスマートフォンや衣服を持ち去り、指紋を拭き取り、浴室の血痕を洗い流すなど、自己の犯罪発覚を防ぐ冷静な判断を下している点。
- 事後の行動:犯行直後に父親へ連絡し、スムーズに車で逃走している点。
精神医学界の専門家からも、「解離症状や強いパーソナリティ障害が存在したとしても、一連の犯行プロセスの合目的性と隠蔽の精密さを鑑みれば、善悪の判断能力や行動制御能力が完全に失われていたと認めるのは極めて困難」との見解が大勢を占めています。