「皇族は法的に離婚できない」という言説が広まる最大の根拠は、皇室の身分関係を規定する根本法規規約である皇室典範に離婚規定が一切存在しないという法的な事実にあります。一般国民の婚姻や離婚は民法第728条から第771条にかけて詳細に規定されていますが、皇族に対しては皇族の民法適用除外が原則となっており、一般の協議離婚届を役所に提出するといった手続きは法的に成立しません。
法務省や法制局の法解釈資料によれば、皇族の身分や身位に関する事項は皇室典範および皇統譜令などの特別法によって厳格に律せられています。現行の皇室典範は、男性皇族が婚姻する場合について第10条で「立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する」と定めているものの、婚姻関係の解消、すなわち離婚については一言も触れていません。
法文上に条文が存在しない理由は、「皇族の離婚を法律で禁止している」からではなく、立法当時に「現役皇族の身位を保持したまま離婚することはそもそも制度の根幹として想定されていない」という建前に起因します。この法的な間隙こそが、皇族の離婚を事実上極めて困難にしている第一の構造的要因です。