鉱物学的・歴史的な事実として、ターコイズの主産地は古代ペルシャ(現在のイラン・ニーシャプール鉱山)やエジプトのシナイ半島、あるいはアメリカ南西部であり、トルコの国土内では商業的な採掘は行われていません。それにもかかわらず、なぜ世界中で「トルコの石」を意味する名称が定着したのでしょうか。
背景には、中世から近世にかけての地中海交易ルートがあります。ペルシャで産出された高品質な青緑色の原石は、シルクロードを経由してオスマン帝国の首都イスタンブール(旧コンスタンティノープル)へと集積されました。そこからベネチア商人やジェノヴァ商人などの手によってフランスをはじめとする西欧諸国へと運ばれたのです。
当時のフランス貴族や商人たちにとって、東方から届く未知の宝石は「トルコ商人から仕入れた石」に他なりませんでした。その結果、古フランス語で「トルコの石」を意味する「pierre turquoise」と呼ばれるようになり、やがて石そのものだけでなく、その鉱物が放つ特有の美しい色合いそのものを「turquoise」と呼称する文化が欧州全域に定着しました。