古代の言霊を宿すこの言葉は、一般に「よもつへぐい」と平仮名で表記されますが、古文書や学術的な文脈では「黄泉戸喫」あるいは「黄泉竈食ひ」という漢字が当てられます。いずれも読み方は同一であり、「黄泉(死後の地下世界)」と「戸(竈=かまど)」、そして「喫・食ひ(食べること)」という構成要素から成り立っています。
語源を分解すると、「よもつ」は「黄泉(よみ)の」、「へ」は食事の煮炊きを行う「竈(へ/かまど)」、そして「ぐい」は動詞「食(は)む」「食ふ」の連用形が濁音化したものです。つまり、直訳すれば「黄泉の国の竈の火で作られた食物を喰らうこと」を意味しています。
単なる「異世界での食事」ではなく、「死者の世界の火を用いて調理由されたエネルギーを体内に取り込む行為」を指している点が、この呪術的儀礼の根幹にあります。火は古代信仰において生命の更新や神聖な力そのものを意味しており、死者の火を体内に宿すことは、現世の生命秩序から完全に逸脱することを指し示していました。