お稚児さんに選ばれた少年は、単なる祭りのマスコットではありません。7月13日に八坂神社へ参拝する「社参の儀」を終えると、正五位少将(しょうごいのしょうしょう)という大名並みの高い神位(位階)を授かり、巡行が終わるまでは本物の「神の化身(生き神様)」として扱われます。
神格化された少年には、日常生活において数多くの厳しい禁忌(タブー)としきたりが課せられます。
代表的なものが「地面に足を一切つけてはならない」という掟です。神聖な体を現世の穢れ(けがれ)に触れさせないため、移動する際は「強力(ごうりき)」と呼ばれる屈強な男性の肩に乗るか、おんぶされて移動します。長刀鉾へ乗り降りする際も、梯子を直接踏むことは許されず、保存会役員の手によって担ぎ上げられます。
さらに、食生活においても厳格な決まりがあります。かつては「女性の手で作られた料理を一切口にしてはならない」とされ、父親や男性の料理人が火の清められた厨房で調理した精進料理や「強飯(こわめし)」を食すしきたりが存在しました。現代では衛生面や健康面への配慮から柔軟に対応される部分もありますが、母親であっても神事期間中はお稚児さんの世話を一歩引いた立場で見守ることが求められます。
わずか10歳前後の少年が、大人の男性に担がれながら無言で神事の重圧に耐える姿は、伝統が息づく京都ならではの神聖な光景と言えます。