森且行が一般女性との結婚を発表したのは1998年のことだ。芸能界を離れ、公益財団法人JKAが統括する厳しい養成所生活を修了してプロデビューを果たした直後だった。同年には長男も誕生し、若きレーサーとして生活の基盤を築く時期と重なる。
オートレーサーという職業は常に死と隣り合わせだ。週末ごとに全国のレース場へ遠征し、開催期間中は宿舎に缶詰状態で外部との連絡すら遮断される。家庭を一人で守る妻にかかる負担は並大抵のものではなかった。かつての国民的アイドルという看板を背負った夫を支え、メディアの好奇の目から子どもを守り抜いた彼女の存在は、初期の森のキャリアを支える最大の防波堤となっていた。