そもそも、私たちが日常的に口にしている卵の大部分は無精卵だ。発生生物学の視点から見ると、無精卵は減数分裂を経た未受精の卵細胞であり、いくら温めても細胞分裂が起きることはない。生命のスイッチが入るには、精子との結合が不可欠だからだ。
一方の有精卵は、胚盤と呼ばれる小さな白点が受精しており、適切な環境下で速やかに器官形成が始まる。発生生物学の研究では、受精からわずか24時間で心臓の原基が作られ、数日で血管網が張り巡らされることが分かっている。この極めて精密な生命形成のメカニズムは、一定の温度制御なしには途中で破綻してしまうほど繊細だ。