「ディストピア飯」のルーツを辿ると、映画史に刻まれた数々の名作に行き着く。金字塔として君臨するのが、巨匠リチャード・フライシャーがメガホンを取った『ソイレント・グリーン』(1973年)だ。人口過密と食糧不足に陥った地球で市民に配給される謎の食料「ソイレント・グリーン」は、まさにディストピアSFにおける架空食の象徴と言える。
さらに、リドリー・スコット監督が打ち立てたサイバーパンクの金字塔『ブレードランナー』では、降りしきる雨の街角で主人公が啜る屋台のヌードルや正体不明の食料が、独特の哀愁と退廃美を漂わせていた。ウォシャウスキー兄弟(現・姉妹)による『マトリックス』でも、船内で乗組員が食べる「味のない粥状の食べ物」が印象深く描かれている。これらの作品に共通するのは、食事が「味覚を楽しむもの」から「生命を維持するための機能」へと変質している点だ。