1984年、シンガーソングライターの吉幾三が発表した名曲「俺ら東京さ行ぐだ」。コミカルなラップ調の歌詞で「テレビもねぇ、ラジオもねぇ」と田舎の不便さを歌い上げたこの楽曲は、当時の歌謡曲シーンに大きな旋風を巻き起こした。当時は電波が届かない、あるいは経済的な事情で買えないという情報インフラの「不在」を意味していた。
しかし半世紀近くが経過した現代、事情は正反対だ。超高速通信が完璧に整備された環境下で、あえてテレビを置かない「持たない選択」をする人々が急増している。昭和の時代に「豊かさの象徴」だった三種の神器は、いまや「時間を一方的に奪っていくデバイス」として敬遠されることすらある。かつて嘲笑の対象だった暮らしが、現代では洗練された自由なライフスタイルとして再解釈されている現実は、非常に興味深い皮肉だ。