ネット上のまとめサイトや短尺動画では、「ハルビンで日本語を話した瞬間に取り囲まれる」「タクシーで乗車拒否に遭う」といった極端な言説が拡散されるケースが散見されます。しかし、これらの多くは扇情的なクリックスルーを狙った誇張や誤認です。
第一の誤解は、「市民全員が日常的に反日感情を滾らせている」というイメージです。ハルビン市民の関心の中心は、厳しい寒冷地での生活基盤、雇用環境、地域経済の回復といった現実的な暮らしにあります。観光名所であるロシア風歩行者天国「中央大街」や「聖ソフィア大聖堂」周辺では、国内外からの観光客を歓迎する商業主義が機能しており、日本語で注文を行ったとしても機械的な接客か、むしろ親切な案内を受けることが大半です。
第二の盲点は、リスクの本質が「市民からの暴力」ではなく「不適切な行動による通報や拘束」にあるという点です。中国では反スパイ法の改正以降、軍事施設だけでなく重要インフラや歴史的モニュメント周辺での写真撮影、ドローン飛行に対する規制が極端に強化されています。731部隊関連施設などのセンシティブな場所で、不用意に立ち入り禁止区域に踏み込んだり、ふざけたポーズで記念撮影をしたりする行為は、周囲の市民から公安当局へ即座に通報される直接の引き金となります。実質的なハルビン日本人旅行の危険度は、犯罪被害ではなく法規制と社会的タブーに対する無知から生じているのです。