松田洋治のキャリアを語る上で欠かせないもう一つの金字塔が、世界的大ヒット映画『タイタニック』の日本テレビ版地上波吹替です。レオナルド・ディカプリオ演じるジャック・ドーソン役の吹き替えは、妻夫木聡版や石田彰版など複数のバージョンが存在しますが、ファンの間で圧倒的支持を集め続けているのが松田洋治版です。
ネット上の掲示板やSNS(X・旧Twitterなど)の声を丹念に分析すると、松田洋治のネットの評判は驚くほど一貫しています。「アシタカの気高さと、ジャックの自由奔放で切ない愛の声が同一人物だと知って鳥肌が立った」「声を聴くだけで胸が苦しくなるような説得力がある」といった称賛が定着しています。技巧的なアニメ声優の文脈とは一線を画す、等身大の人間臭さと知性を両立させた声のテクスチャーが、2020年代半ばを過ぎた今もなお視聴者の記憶に鮮烈に残っている証左です。
5歳で劇団ひまわりに入団して以来、50年以上の芸歴を誇る松田洋治の経歴プロフィールを紐解けば、名匠・森田芳光監督をはじめ、演出家・蜷川幸雄などの現場で揉まれ続けた百戦錬磨の演劇人であることがわかります。声の仕事は彼の広大な表現活動の「ごく一部」に過ぎず、その根底には徹底して鍛え抜かれた身体表現と台本解釈の力学が存在しています。