現在の華やかな景観に至るまでには、半世紀近くに及ぶ市民運動と都市再生のドラマが存在します。1960年代後半、近代化の波とともに運河の埋め立てと道路拡幅計画が持ち上がった際、保存を求める市民と行政の間で激しい議論が巻き起こりました。その結果生まれたのが、昭和61年(1986年)に完成した「運河の半分を道路にし、半分を散策路として残す」という歴史的妥協案です。この時整備されたのが、現在の夜景を形作る63基のガス灯でした。これこそが小樽運河ライトアップ冬の経緯における最大の原点です。
現在、イルミネーションや倉庫群の照明が22時30分前後に落とされる運用方針には明確な理由が存在します。観光関係者の証言や景観ガイドラインによると、小樽運河ライトアップ消灯理由の根底にあるのは「観光公害(オーバーツーリズム)の抑制と周辺住民の生活環境保護」、そして「光害による歴史的建材の劣化抑止とエネルギー調和」です。深夜まで強烈な光を当て続ける歓楽街型の演出を退け、日付が変わる前には静寂な港町の本来の闇を取り戻す。この引き算の美学こそが、小樽のブランド価値を支えています。