ネット上のブログやSNSの解説で頻繁に見受けられるのが、「Look back in anger=怒って後ろを振り向くな」という短絡的な誤訳です。英語表現の文脈を無視したこの解釈は、ノエルが込めた真の意図を見誤る原因となっています。
歴史的背景として、1950年代の英国文学界を揺るがしたジョン・オズボーンの戯曲『怒りを込めて振り返れ(Look Back in Anger)』が存在します。当時の支配階級や閉塞した社会に対する若者たちの鬱屈した反逆を描いた名作ですが、ノエルはこれに明確な否定の「Don't」を冠しました。
「過去に対していつまでも怨嗟の声を上げ続けるのではなく、過ちもすれ違いもすべて許容した上で前に進む」。これこそがタイトルの正確な意味合いです。自分の不遇や過去の失敗を誰かのせいにし、怒りの感情を抱えたまま生きていくことへの決別宣言なのです。
また、「リアムが歌っていないからオアシスの本流ではない」という言説も明らかな誤解です。レコーディング当時、ノエルはリアムに対して『Wonderwall』と『Don't Look Back in Anger』の2曲を提示し、「どちらか1曲をお前が歌え。残った方を俺が歌う」という選択権を与えました。リアムが『Wonderwall』を選択した結果、ノエルが本作を歌うことになり、ノエルの繊細かつ力強い声質が楽曲の持つ普遍的な哀愁と完璧に調和することとなったのです。