実際に自宅のリビングでドラセナの花が咲いた経験を持つ人々の証言を追うと、視覚的な美しさ以上に「嗅覚と触覚の衝撃」に関する声が圧倒的多数を占めます。園芸愛好者コミュニティやSNSに寄せられた一次情報を検証すると、開花期には日常の室内空間が一変するほどの劇的な変化が生じます。
幸福の木の花は、日中はつぼみを固く閉ざしており、日没とともに夕方から夜にかけて一斉に開花する夜咲き性を持っています。開花と同時に放たれる匂いは非常に濃厚で、ジャスミンやクチナシ、あるいは百合にバニラシロップを煮詰めたような、むせるほど甘美で芳醇な芳香です。自生地の熱帯アフリカにおいて、暗闇の中で活動する夜行性の蛾や小型哺乳類に花の位置を知らせるために進化した生態特性ですが、現代の高気密・高断熱住宅のリビングでは、その香りが部屋中に充満します。「天然のアロマのようで癒やされる」と称賛する声がある一方で、「香りが強すぎて頭痛がする」「夜眠れず窓を開けて換気せざるを得なかった」という切実な悲鳴が上がるのも無理はありません。
さらに現場で飼育者を悩ませるのが、花の周囲から溢れ出す無色透明な液体の存在です。この液体は糖度を極めて高く含んだ純粋な花の蜜であり、触れると指先に強い粘着性が残ります。放置すると蜜が滴り落ちてフローリングや葉の表面をベタベタに汚染し、時間が経つと空気中のホコリを吸着して黒ずんだり、カビの発生源(すす病)を誘発したりします。床に新聞紙やビニールシートを敷いておくなどの物理的な防汚対策を行わないと、住環境に実害を及ぼす厄介なトラブルへと発展する傾向が見られます。