予防医学の分野では、国内外の大規模コホート研究によって「どれだけ歩くのが健康長寿に最も寄与するのか」という至適歩数の検証が進んでいます。世界的に知られる東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利博士による「中之条研究」や、米国医学会雑誌(JAMA)に掲載された数万人規模の追跡調査では、ある明確な境界線が導き出されました。
死亡率の低下や生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の予防効果は、1日7500歩〜8000歩付近でプラトー(頭打ち)に達するという事実です。8000歩を超えて歩数を1万歩、1万5000歩、2万歩へと増やしても、死亡リスクの低減率は統計学的に有意な変化を示さず、むしろ運動器疾患(整形外科的トラブル)の受診率が右肩上がりに跳ね上がることが分かっています。
ウォーキングの最適な歩数に関する最新研究が共通して示しているのは、「歩数(量)」だけでなく「歩行速度や強度(質)」の重要性です。ダラダラと2万歩をこなすよりも、なんとか会話ができる程度の速歩き(中強度の運動)を15〜20分間挟みながら合計8000歩前後を着実に歩くほうが、長寿遺伝子の活性化や心肺機能の強化において遥かに優れた成果をもたらします。