深蒸し茶とは、緑茶(煎茶)の製造工程である「蒸し」の時間を、通常の2倍から3倍に引き延ばして作られたお茶のことです。摘み取ったばかりの新鮮な生茶葉は、そのまま放置すると自身の酵素の働きで発酵が進んでしまいます。そこで熱処理を施して発酵を止めるわけですが、日本茶では伝統的に「蒸気で蒸す」手法が用いられます。
一般的な普通煎茶(浅蒸し〜中蒸し)の蒸し時間が30秒〜40秒程度であるのに対し、深蒸し茶は60秒〜120秒、長いものでは180秒(特蒸し茶)もの時間をかけてじっくりと蒸し上げます。この蒸し時間の長さこそが、味わい、見た目、そして栄養価に決定的な違いを生み出す分岐点となります。
蒸し時間を長く取ると茶葉の組織が極限まで柔らかくなり、その後の揉み(もみ)工程で細胞壁が破壊され、茶葉が粉状に細かく砕けます。「なぜ深蒸し茶はこれほど濃い緑色になるのか?」という疑問の答えはここにあります。急須の中で細かな茶葉の破片(浮遊粒子)が湯の中に溶け出し、光を乱反射させることで、濁りのある鮮やかな深緑色の水色が生まれるのです。
味わいの面では、蒸気の熱によってお茶特有の渋み成分であるカテキンの構造が変化し、角が取れたまろやかな口当たりに仕上がります。さらに、細胞が崩れているため旨み成分であるテアニンやアミノ酸が一気に溶け出し、濃厚な甘みと重厚なコクをダイレクトに堪能できるのが最大の特徴です。