インターネット上でマナーの議論が過熱すると、本来は「相手への気遣い」や「ワインを美味しく味わうための知恵」であるはずの作法が、他者を減点方式で裁くための武器と化してしまいます。いわゆる「マナー警察」的な言説によって、「ボウルを持ったら即マナー違反」「ステムを持つのは日本人だけの恥ずかしい行為」といった極端な言説に振り回される必要はありません。
欧州の社交界において最も重視されるのは、形式の厳密さ以上に「周囲を不快にさせないこと」「同席者との対話を円滑に楽しむこと」です。たとえば、関節炎を患っている高齢者や、手の震えがある人が安定のためにボウル部分を両手で抱えていたとしても、欧米の紳士淑女がそれを無作法だと笑うことは絶対にありません。場にそぐわない指摘を口にすること自体が、最も下品なエチケット違反とみなされるからです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
ワイングラスの所作において、自分がどのスタンスを取るべきかは、自身の目的と同席する相手の属性によって決まります。
ステム(脚)を持つべき人・シーン: フォーマルな会食、高級フレンチやイタリアン、取引先との接待、立食レセプションに参加する人。ワインの温度を保ち、グラスを美しく保ちながら、相手に洗練された知性や教養を印象づけたい場合に最も推奨されます。
持ち方に過度にとらわれる必要がない人・シーン: カジュアルな居酒屋やバルで気心の知れた仲間と飲む場合、あるいはワインの品種や温度管理を厳密に問わない日常の食卓。作法を気にして会話がぎこちなくなるくらいであれば、自然体でリラックスした持ち方を選ぶほうが場の一体感を生み出します。