「受傷から2か月が過ぎても、小走りをすると外くるぶしの前がズキッと痛む」「正座をすると足首の前側が詰まるように痛い」。こうした前距腓靭帯痛みが治らない理由には、靭帯そのものの治癒プロセスの破綻と、二次的に生じる関節内病変の2つの構造的要因が横たわっています。
第1の要因は、靭帯が「緩んだ状態で癒合してしまった」ことによる関節のゆるみです。靭帯は毛細血管の血流が比較的乏しい結合組織であり、断裂・損傷後に断端同士が近接した状態で固定されないと、引き伸ばされたゴムのようにだらりと緩んだ瘢痕組織で隙間が埋まってしまいます。その結果、関節の締まりがなくなり、歩行のたびに距骨が前方へ異常に滑り出して周囲の神経や骨膜を刺激し続けることになります。
第2の要因は、関節内のインピンジメント(衝突)症候群や滑膜炎の併発です。靭帯が損傷した部位に異常な瘢痕組織(モヤモヤとした肉芽組織)が過剰増殖し、足首を背屈させた際に関節の隙間に挟み込まれて鋭い痛みを引き起こします。さらに靭帯損傷に伴って軟骨の一部が剥離する骨軟骨病変が隠れていた場合、炎症性サイトカインが関節液内に持続放出して慢性的な痛みのループを形成します。
これらを放置すると、日常的な微小外傷が蓄積して慢性足関節不安定症(CAI: Chronic Ankle Instability)へと移行します。靭帯の物理的弛緩だけでなく、足首の位置感覚を司るメカノレセプター(受容器)が破壊され、平坦な道でも足首がカクッと抜ける「Giving way(足の崩れ現象)」を頻発する悪循環へと陥るのです。