世界的なベストセラーとなったアドラー心理学の名著『嫌われる勇気』に続き、その実践編である『幸せになる勇気』で提示された命題は明確です。「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と同時に、「人間の幸福もまた、すべて対人関係のなかにある」という真理です。
多くの人が「他者から認められたい」「周囲から優秀だと思われたい」という承認欲求の虜になり、自らの人生を他者の期待を満たすための舞台装置にしてしまっています。しかし、幸せになる勇気の要約において中核となるのは、「課題の分離」と「共同体感覚」の確立です。自分の課題(自分がコントロールできる行動や誠実さ)と、他者の課題(自分の行動を相手がどう評価するか)を峻別し、他者の機嫌を取る生き方を手放す決断が求められます。
人生を好転させる思考法の真髄は、他者からどう見られるかを気に病むのではなく、「自分はこの共同体(社会や身近な人)に対して何を提供できるか」という他者貢献への意識の転換です。自分が他者の役に立っているという主観的な実感(自己有用感)を持てたとき、承認欲求に依存しない揺るぎない幸福感が心の内側から湧き上がります。