ジャーニー名曲歌詞和訳の深層|実在しないサウスデトロイトの真実

ジャーニー名曲歌詞和訳の深層|実在しないサウスデトロイトの真実

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『ドント・ストップ・ビリーヴィン』の歴史を語る上で欠かせないのが、2つの記念碑的テレビシリーズによるドラマチックな復権劇です。

まず2007年6月、米HBOの傑作マフィアドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア(The Sopranos)』の最終回「Made in America」。主人公トニー・ソプラノがダイナーのテーブルに座り、ジュークボックスから選んだのがこの曲でした。家族が集い、オニオンリングを口に運ぶ日常風景のなか、スティーヴ・ペリーの「Don't stop──」という歌声が響き渡った瞬間、画面は唐突にブラックアウト(暗転)し、一切の無音のまま幕を閉じました。トニーは暗殺されたのか、それとも生き延びたのか。全米で凄まじい議論が巻き起こると同時に、暗転直前に流れていたこの曲は「人生の不条理と一瞬の生」を象徴するサウンドトラックとして再浮上したのです。

そのわずか2年後の2009年、今度は米FOXのミュージカルドラマ『glee/グリー』の第1話(パイロット版)で、廃部寸前の合唱部に集まった落ちこぼれの高校生たちが、赤いTシャツを着て披露したのがこの曲でした。スクールカーストの底辺でいじめや孤独に耐える若者たちが、「信じるのをやめるな」と声を合わせて熱唱するシーンは、世界中の視聴者の涙腺を崩壊させました。このカバーシングルはビルボードで原曲を上回る4位を記録し、80年代ロックを知らないティーンネイジャー層の心を鷲掴みにしました。

なぜ、これほど全く異なるトーンの作品で同じ曲が機能したのか。その理由は、歌詞の後半に登場する次の二行に集約されています。

「Some will win, some will lose / Some were born to sing the blues(勝つ者もいれば、負ける者もいる/ブルースを歌うために生まれてきた者だっている)」

この歌は、現実を無視した安直なポジティブシンキングを押し付けません。人生には残酷な勝敗があり、生まれながらに哀しみを背負わされた人々がいるという冷厳な事実をありのままに受容しています。過酷な現実を受け入れた上で、それでもなお「希望を手放すな」と歌うからこそ、マフィアのボスから居場所のない高校生まで、あらゆる人間の琴線に触れるのです。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。