剣道の試合において技の成否を決定づけるのは、打撃の強さや当て感の早さだけではありません。剣道試合・審判規則第12条には、有効打突の条件として「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの」と明確に規定されています。
審判員が瞬時に白旗・紅旗を挙げる判断基準には、極めて厳格な力学的・精神的要素が組み込まれています。打突部位(面・小手・胴・突き)に対して、竹刀の先端から約3分の1に位置する「物打ち(ものうち)」が正確に捉えていること、そして打突の瞬間に右手と左手の手の内が締まり、冴えのある打突音が響いているかが精査されます。
さらに見落とされがちなのが「残心(ざんしん)」の質です。打突直後に体勢が崩れたり、相手の反撃に無防備な姿勢を晒したりすれば、どれほど鋭い音が鳴り響いても一本は取り消されます。相手を制したまま次の攻防に即応できる身構えと心構えが揃って初めて、技は完結します。