斎藤邦実さんという人物を語る上で欠かせないのが、斉藤家が信仰していた末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の厳格な教義と、徹底した家庭教育です。1984年に「東宝シンデレラ」のオーディションをきっかけに芸能界入りし、1985年のドラマ『スケバン刑事』で社会現象を巻き起こした斉藤由貴さんですが、その背後には母・邦実さんの厳格な規律が存在していました。
モルモン教では、飲酒や喫煙、カフェインの摂取が禁止されているだけでなく、純潔の保持や慎み深い生活態度が強く求められます。邦実さんは家庭内においてこれらの教義を徹底させ、娘の門限や読書内容、日々の生活態度に至るまで厳しく管理していました。斉藤由貴さん自身、過去の手記やテレビのロングインタビューにおいて「母の期待に応えなければならないという強いプレッシャーと、それに対する反発心が常に心の中で渦巻いていた」と述懐しています。
一方で、邦実さんの存在は娘のキャリアを切り拓く強力なエンジンでもありました。オーディションへの応募を後押しし、過密スケジュールの中で娘の健康と生活を守るために奔走した姿は、まさに昭和を代表する献身的な母親そのものでした。厳しい規律と無償の献身という二面性が、若き日の斉藤由貴さんの繊細でどこか影のある独特の表現力を育む土壌となったことは間違いありません。