一方で、阪神タイガース側の引き留め工作も徹底していた。チームの精神的支柱であり、ナインからの人望も厚い大山を失うことは、単なる戦力ダウンにとどまらず、チームの解体を意味しかねない。球団首脳陣は早い段階から「生涯阪神」を掲げ、背番号46に対する特別な評価を提示し続けた。
甲子園の温かいファンの声援、仲間たちとの絆、そして猛虎の主将としての誇り。それらは金額という数字だけでは推し量れない価値を持っていた。どれほど高額な提示を他球団から受けようとも、自らを育ててくれた劇団への愛着と恩義が、大山の胸中で激しく葛藤を引き起こしていたことは容易に想像できる。