閉経や卵巣機能に関しては、インターネットや民間療法を中心に科学的根拠を欠く誤解が氾濫しています。無用な不安を払拭し、正しい知識を持つために、代表的な3つの俗説を検証します。
誤解1:「初潮が早かった人は、そのぶん閉経も早くなる」
これは広く信じられている誤謬の一つですが、医学的な相関関係は否定されています。女性が胎児期に卵巣内に持つ原始卵胞は約200万個あり、出生時に約100万個、思春期には約30万個へと自然に減少(閉鎖)していきます。毎月の排卵で失われる卵子は通常1個ですが、実際にはその周囲で数百〜千個の卵胞が同時に消滅しています。初潮が1〜2年早かったとしても、閉鎖していく膨大な卵胞数全体から見れば誤差の範囲であり、初潮年齢が閉経時期を直接決定づける要因にはなりません。
誤解2:「低用量ピルを長年飲むと卵子が温存され、閉経が遅くなる」
低用量ピルは排卵を一時的に抑制しますが、卵巣内での自然な卵胞の消滅プロセス(閉鎖)をストップさせることはできません。排卵が止まっていても、卵胞は毎月自然に退行していくため、ピルを長期間服用したからといって卵子の在庫寿命が延びたり、閉経が大幅に遅れたりすることはありません。ピルの中止後に本来の卵巣予備能に応じた月経状態へと戻るだけです。
誤解3:「AMH(抗ミュラー管ホルモン)値が低いと、今すぐ閉経する」
不妊治療などで測定されるAMH値は、発育過程にある前胞状卵胞から分泌されるホルモンであり、いわば「卵巣内に残っている卵子の在庫数の目安(卵巣予備能)」を示す指標です。AMH値が極めて低くても、排卵が規則正しく起きている限り妊娠は可能ですし、直ちに翌月閉経することを意味するわけではありません。AMHは「卵子の数」を反映するものであり、「卵子の質」や「排卵の有無」そのものを測る数値ではないという点を正しく理解しておく必要があります。