世界遺産の姫路城を擁するこの地域は、古くから播州平野の豊かな食材が集まる要衝だった。食肉文化の発展も偶然ではない。世界中から羨望を集める神戸ビーフの素牛(もとうし)となる但馬牛は、兵庫の厳しい山間部で育まれ、その確固たる血統が脈々と守られてきた背景がある。
肉の価値を測る指標として知られる日本食肉格付協会の等級は、歩留まりや脂肪交雑を厳格に審査する。しかし、現場の職人たちは数字の先にある「融点」や「香り」を重視する。JA全農兵庫を通じて仕入れられる確かな素性を持つ肉を、店主が自らの手で一本ずつ筋を整え、肉の繊維に合わせて包丁を入れる。
包丁の角度ひとつで舌触りは激変する。城下町の職人気質が、肉のポテンシャルを極限まで引き出している事実はもっと知られていい。